こんばんは。yoshitoです。

そういえばライフルスコープ関連の記事が少ないなと思いざっと書いてみようと思います。
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目次
①耐久性と信頼性
②目標までの距離
③時間的猶予
④弾道補正の仕方
まとめと余談
ライフルスコープはすごい数の種類がありますよね。
メーカーの数もモデルの数も様々です。
値段も数千円~100万円近くまであり、それでいて外観でぱっと見では違いが分かりません。事前知識がない方にとってはまさに消費者泣かせですね。
私自身はベテランの猟師というわけではないのですが、商売柄情報は集まってきますのでそれを使って書いていこうと思います。
(価格がなぜここまで開きがあるのかは一番下の余談のところに書いておきます。)

スコープを選ぶ上で重視すべき点は4つあると思っています。
①耐久性と信頼性
②目標までの距離
③時間的猶予
④弾道補正の仕方


①耐久性と信頼性



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画像引用元:instagram この状態でも使用可能なS&Bの驚異的な耐久性の画像

スコープは銃にとって、とても重要な装置です。
高性能な100万円の銃でも付いてるスコープが狂っていればそれはもう当たらない銃となってしまいます。
そのくらい重要です。
装薬銃で使用する場合にはある程度の耐久性と信頼性が必要です。
反動の大きい12番スラッグやライフルのマグナム口径では特に耐久性を重視して選ぶ必要があります。
エアライフルの場合は反動がないため装薬銃よりはハードルが下がります。
それでも日本で銃は安く手軽には手に入らないものです。せっかく手に入れた銃のポテンシャルをしっかり発揮させるために「なんでもいいよ」とは考えないでください。(なんでもいいよって言われてもなるべくしっかりしたものを選びますが)



②目標までの距離


鹿

ここでレンズのスペックが決まります。
100mと300mでは必要なレンズスペックが大きくことなります。近い距離ならそこまで良いレンズでなくても気になりませんが、300mとなると安物では話にならないのです。これは倍率に関係なくです。高倍率でもレンズが悪いと「確かに大きくなってるんだけど認識しづらい」ということになります。もし長距離で使用する場合少なくとも20万円くらいは予算を組んだ方がいいです。

③時間的猶予


鹿 - コピー

これは獲物を見つけてから撃つまでの時間的猶予のことです。
あまり経験が無い方が盲点となりやすいところです。
標的射撃の方は見なくてもいいところかも知れません。
ここでスコープの倍率が大方決まります。
スコープを初めて買う時、倍率って高い方がいいと思いますよね。
絶対そういう心理はあると思います。(私はものすごくありました)
「遥か遠くのものが大きくこんな鮮明に見える!」って個人的にはすごくロマンを感じてしまいます。
しかし、そうとも限らないんです。ライフルスコープにおいて、倍率は大は小を兼ねません。一長一短です。
スコープというのはメーカーの努力によって性能が上下しますが、光学的にどうしても超えられない壁が存在します。
それは高いズーム倍率の時には視野もアイボックスも焦点深度も小さいということです。

視野
これは、説明不要ですね。拡大すれば狭い範囲しか見えなくなるので倍率が高くなるほど構えた時に獲物をスコープの中に入れることが難しくなります。

アイボックス
アイボックス
スコープは適切な距離と位置に目を置かないと綺麗に見えません。
そしてこの像が綺麗に見える範囲の大きさをアイボックスと言います。
スコープというのは大体接眼レンズから9cmくらい離れたところに目を置くと像が綺麗に見えます。この距離をアイリリーフといいますが、この9cm「くらい」というのが重要なところです。

例えばある同じメーカーの倍率が違うスコープがあったとしましょう。
すると像が綺麗に見えるアイリリーフの範囲はこんな感じになると思います。(すいません細かい数字に付いてはすごくざっくりです)

1倍のスコープの場合、7~11cm
30倍のスコープの場合、8.8cm~9.2cm

30倍のスコープの方がかなり範囲が狭いです。
これは一瞬を争う狩猟においては高倍率なスコープを使うことは相応の腕が無いと撃つことすらできずにチャンスを逃してしまう可能性があるということです。
標的射撃や例えば500mなどの長距離射撃の場合、精密な射撃が重要ですが、獲物が逃げる心配は少なく、時間的な猶予は大きいです。この場合倍率は高い方が有利です。
逆に巻き狩りなどは精密性よりもいかに早く撃つかが重要となってきますので、アイボックスが大きい倍率が低い方が有利です。
(アイボックスを大きくするには倍率を下げるほかにレンズを大きくする、チューブ径を太くするなどの方法がありますが、倍率の影響が一番大きいです)

焦点深度
これはピントの合う範囲の広さのことです。(正確には深度なので深いとか浅いとかの表現が正しいと思いますが、ここでは広い狭いで表現させてください。)慣れない方はピンと来ないかと思います。
最近多くの方はスマホを持っています。
スマホは写真が綺麗に撮れます。
手ブレさえしていなければピンぼけすることはほとんどありませんよね。
極端に近づいたりしなければ被写体から背景まで全部ピントが合ってくれます。
あれはスマホに使われているレンズがいわゆる広角レンズだからです。つまり視野が広く、ほとんどズームされていないレンズということです。
逆にズーム機能が高いでっかいレンズの一眼レフだと背景がぼけたおしゃれな写真が撮れますね。
「ズームして拡大すると焦点深度は狭くなる」これは光学的に避けられない傾向です。


焦点深度が広ければピントを合わせる作業が素早くできます。1倍のスコープなんて10m~500mくらいまでピント合わせなんて要りません。目標物は大きくなってくれませんが、ピント自体は合ってくれるんです。(低倍率のスコープにフォーカス機能が付いていないのは、メーカーが手抜きしてるとか、機能が少ないとかではなく、「そもそも不要」ということをメーカーが把握しているから付けていないのです。)

ところが高い倍率で焦点深度が狭い場合、ピントを合わせないと使えたものではありません。
加えて獲物が歩いたり走ったりして動いていた場合、焦点深度が狭いと一度ピントを合わせても移動されたらピンボケして再度ピントを合わせないといけないという状況が生まれてきます。

つまり、急いで撃つなら倍率は低いに越したことはないんです。大きく見えてもピンボケしたり視野に入らなければ何の意味もありません。
1倍(等倍)が最強なんです。でも「小さくて見えなぁぁい!」を防ぐために仕方なくズーム機能を使うんです。急いで撃ちたい場合、ズームは「なるべく大きく見せて撃ちやすくする」機能ではなく、「狙える程度にしかたなく大きく見せる」機能になってくると思います。


加えて倍率が大きいスコープは手ブレも大きく感じます。委託できない場合相応の腕がないと逆に「いつ引き金を引けばいいんだ?」と感じると思います。


倍率に関してまとめてみると

一番時間的猶予の少ない巻き狩りをやられる方、是非、1~〇倍のスコープを使ってください。1倍があるかないかで、使い勝手が大きく変わります。イルミネーションも付いてると尚いいです。1~6倍くらいがお勧めです。予算が許せば1~8倍あると単独猟でもそこそこの距離まで不自由しないと思います。


以下は単独猟メインと考えます。

単独の大物猟の場合、想定距離を15で割ったくらいの最高倍率がいいと思います。
(150mなら10倍、300mなら20倍)


カモ猟(エアライフル)の場合獲物が小さいので距離に対しては少し高めの倍率になります。
想定距離を5~6で割ったくらいの最高倍率がいいと思います。
(50~60mなら10倍、100~120mで20倍くらい)
しかし射撃場のことも考えるとエアライフルは16倍あると50mで弾痕が見えてくるのでそこも判断材料に加えてもいいかと思います。



④弾道補正の仕方


これはレチクルとレチクルタレットに関わってきます。
弾速が速く、長距離で使用せず、獲物の大きい自動ライフル銃はほとんど弾道補正をする必要がありませんが、エアライフル、スラッグ・サボット、長距離使用のボルトライフルでは弾道補正をする必要が出てきます。
弾道補正には大きく2つの方法があります。



(1)レチクルで弾道補正
レチクルにはシンプルな十字のものの他にミルドットレチクルやDBCレチクルなど弾道補正に対応したものがあります。
あらかじめどの距離でどの点(あるいは線)に着弾するか知っておけば、弾道補正が可能です。シンプルな十字でも目検討で撃てる方もいらっしゃいますが、経験が物を言うのでこれから始める方があえて目指すべきところではないかなと思います。

(2)レチクルダイヤルを使って弾道補正
レチクルダイヤルで弾道を補正をするには距離毎のドロップの大きさを調べ、どの距離でいくつレチクルダイヤルを回せばいいか把握しておき、距離によってダイヤルを回して弾道補正を行います。レチクルダイヤルにマーキングしたりしておくとやりやすいです。



二つの方法にはそれぞれ短所と長所があります。
(1)レチクルで弾道補正
長所:素早い弾道補正ができる。

短所:
・レチクルの刻みは1milや0.5milとそこまで細かくないので精密性は劣る。
・セカンドフォーカルプレーンの場合、使用する倍率によって補正値が変わってきてしまうので要注意です。(私は慣れないうちの猟で倍率のことをすっかり忘れて間違った弾道補正をしてしまったことがあります。気づいたときにはノーチャンスでした)
・高倍率で視野が狭くなっている場合などでは視野外の着弾になることがある。


結論:素早い射撃が必要でドロップがそこまで大きくないな短・中距離で有効な手段です。どの倍率でもファーストフォーカルプレーンのスコープと相性がいいです。



(2)レチクルダイヤルを使って弾道補正
長所:
・0.1milや1/4MOAなど細かい単位で補正が可能。
・倍率に関わらず弾道補正が可能。
・高倍率で視野がせまくても調整幅さえ足りていれば弾道補正が可能。


短所:
・ダイヤルを回す動作が入る分どうしても時間がかかる。
・レチクルダイヤルの精度が無いと選択肢に入れることはできない。


結論:獲物に気づかれる心配がなくて時間的に余裕があり、精密な狙いが必要で高倍率を使う遠距離射撃に向いています。標的射撃もこちらの方が分があります。タクティカルタイプ(タレットキャップがないもの)でゼロストップ機能(ゼロインしたところで目盛りを0にできる機能)のあるタレットだと時間のロスを少なくできます。レチクルは視認性重視のシンプルな十字がお勧めです。

選び方まとめ


空気銃100m以下→4-16倍、FFP、弾道補正ができるレチクル、レンズはそこまでこだわらなくていい。

空気銃100m以上→24倍、弾道補正はレチクルでもダイヤルでもどちらでもいい。レンズは少しだけ良いものを。

スラッグ・自動ライフル(巻き狩り)→1-6倍、弾速に対して距離が短いので弾道補正は必須ではない。

スラッグ・サボット(単独猟 最長150m)→〇~9倍、弾道補正ができるレチクル

ボルトライフル(単独猟 中距離 最長150~250mくらい)→〇~16倍、弾道補正ができるレチクル

ボルトライフル(単独猟 長距離 最長300m以上)→〇~20倍以上、シンプルなレチクルでダイヤルでの弾道補正

といったところがお勧めです。
参考になったでしょうか?
別記事でメーカーの紹介なんかもできたらいいなと思っております。
ご閲覧ありがとうございました。






ここからは余談みたいなもので、最初に少し触れた価格の開きについて。
スコープの価格の大きな開きの理由について
①レンズ
②精密性
③堅牢性
④その他の機能

①レンズ
言うまでもなく高価なスコープは性能の良いレンズが使用されております。
しかしこれもまた分かりづらいところがあって、数値でレンズの良し悪しを判断するのはなかなか難しいです。
指標の一つに「透過率」というものがありますが、これだけで良し悪しを判断するもの良くありません。透過率は透過した光の量を示しますが、通った光が変質していては何の意味もありません。
一流メーカーのレンズには漏れなく「コーティング」処理が施されておりますがコーティングは重ねるほど透過率が低下します。それでもコーティングを施すのは「光の形を変えずに透過させる」ことが難しいからです。
像が歪んでしまったりぼけてしまったりすれば明るくても意味が無いのです。
また各メーカーに色味の個性があります。(赤が強い、又は青が強い等)
他にも像の端の方が歪んでないか、ピントの合う幅(焦点深度)が狭くないか、アイボックスが小さくないかなどもレンズの良し悪しで変わってきます。
焦点深度は標的射撃の時は関係ありませんが、焦点深度が狭いものをハンティングで使う場合獲物の前後にある木や草がぼやけて大きくなり、獲物が隠れてしまいます。
アイボックスが小さいと素早い挙銃の難易度があがりますし、視覚も大きくなります。(高倍率のスコープはアイボックスが小さくなることは避けられませんが、安価なものは低い倍率でもアイボックスが小さい傾向があります。)

②精密性
スコープには様々な機能が付いています。
レチクルの上下左右の調整、倍率の変更、ピントの調節、ミルドットレチクル等によるドロップや左右のズレへの対応等。
その一つ一つの精度は製品として公差を明記していません。
しかし高価な物と安物には使ってみると明確に差があります。

たとえばネットで安いスコープ(と言っても2万円~4万円くらいでしたが)を買われたお客様が「ドロップが計算値と合わない」というお話がありました。銃の不良かとも疑ってみましたが実はレチクルの目盛りが商品スペックと異なっていました。通販では普通に購入できますが、銃砲店では扱っていないメーカーでした。

他にはゼロインをするときにレチクルの調整で「1クリック=1/4Moa」という表記を良く目にしますが、実際に着弾のズレから計算して「何クリック回せば合うはず」と調整してみてもピタリと合ってはくれません。
これがピタリと合うのは割と高価なスコープです。もちろん個体差もありますが10万円くらいは出さないと多少ズレが出てくることが多いです。安いメーカーはバックラッシの影響も顕著だったりします。
しかしここの精密性は「レチクルダイヤルを回して弾道計算をする人」でない限りあまり重要ではないかもしれません。ゼロインさえ済ませてしまえば動かすことはありませんから。

③堅牢性
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装薬銃のスコープとして使う場合は発射による反動があるため、ある程度の堅牢性を必要とします。
衝撃以外にも耐熱性、耐寒性、耐水、耐圧などスコープが機能不全に陥らないように一流メーカーは様々な努力をしています。
しかしこれを突き詰めていくとどうしてもスコープは重くなっていき、価格も上がっていきます。猟場によっては軽さはとても重要になってきますのでバランスが大事ですね。

④その他の機能
これは製品としての質というよりは車のオプションのようなものです。
利便性を高めるための装置です。
1インチチューブより30mmチューブ、その上に34mmチューブ。
フロントフォーカスより使いやすいサイドフォーカスや、動いている獲物を狙う時等に視認性を高めるためのイルミネーション、レチクルダイヤルによる弾道調整をしやすくするゼロストップや様々なBDC補助機能、機能性が高いものは高価になってきます。一流メーカーは高価ですが精度もピカイチです。