北海道での猟はもう始まりましたね。その他の地域ではあと1か月。待ち遠しいです。

皆さんこんにちは。ハロルドです。

猟といえば、やはり汎用性が高く、軽量で、装填数の多い自動(半自動、セミオート。以下自動散弾銃と表記)散弾銃を使われる方がもっとも多いのではないでしょうか。今回はそんな自動散弾銃の種類とそれぞれの特徴についてお話したいと思います。自動散弾銃を選ぶにおいて、主に考える点は、銃身の種類と長さ、回転機構の種類の2点と、そのほかには衝撃吸収の度合いなどなどいろいろ考えられます。


自動散弾銃は主に3種類、ロングリコイル(銃身後退式, A-5 Browning)、ガスオート(レミントンM1100)、イナーシャ(慣性)の機構に分かれます。開発された順番で言うと、ロングリコイル(1902年ブローニングまたはFN)、ガス(1963年Remington)、イナーシャ(1967年ベネリまたは1908年シェーグレンショットガン)です。現在販売されているものはガスオートとイナーシャがメインになっています。

銃身はリブ銃身、オープンサイトスラッグ銃身、カンチレバー銃身(スラッグ、ハーフライフル)などがあり、リブ銃身は交換チョーク式のものが多いです。

それでは、それぞれのオペレーションシステムについて解説していきます。

①ガス式(ガスオート、ガスピストン)
②イナーシャ式
③ロングリコイル

1.ガス式
日本で流通しているガス式を採用している主なメーカーは、ベレッタ、ブローニング、ウィンチェスター、レミントン、モスバーグなどがあります。名だたるメーカーがそろっていますね。
構造は、撃発時に発生するガス圧を銃身内にある通気口から回転機構へ取り込みその圧によってピストンを押し出し、ボルトのロッキングを解除します。ロックが外れたあとはピストンの勢いと反動によってボルトが手前に動き排莢、銃床部にあるスプリングでボルトが戻り次弾装填となります。言葉で伝えると大変わかりづらいかと存じますので、BerettaA400の動画をご覧ください。


(Youtubeから)

ボルトの戻りは反動のみならずガスピストンの押し出す力も利用するためスプリングは強めになっており、手動でレバーを引く際はイナーシャ式より比較的固いのも特徴の一つです。恐らくですが、強力なスプリングで回転もイナーシャ式より早いのではないかと思います。(モデルやメーカーにもよるところですので一概には言えないところですが・・・)しかしその反面、ガスが回転機構を通過するため汚れがたまりやすい部分が多く、回転性能を維持するためにはメンテナンスが必要です。単純に言うと、いろんなところが汚れやすくまめな掃除が必要というお話です。



2.イナーシャ式
有名なメーカーは、ベネリー、ブレダ、フランキ、ストーガーなどがあります。映像はBenelliのものです。


(Youtubeから)

イナーシャ式の構造はいたってシンプル。撃発後、リコイルによって慣性の法則によりボルト内の強力なスプリングが縮み、その戻る力でロッキングが外れボルトが下がり、ストック内につながるスプリングが衝撃を吸収し跳ね返りボルトを戻し次弾装填。ロッキングが外れて初めてボルトが後退するよう設計されているため発射した瞬間はボルトがロックされておりガス圧は銃口側へのみまっすぐ向かいます。ガス式と違いガスを逃がす穴がないため弾速は速く、反動はガス式と比べると理論上強いです。ですが、命中精度は落ちにくいです。これはショットガンに限らず自動式ライフルにもあてはまりますが、ガス式はガスの抜け方が一定ではなく銃口から弾がでるまでのガス圧にむらがあり、それにともない命中精度にもむらが出ます。

イナーシャ式の最大の特徴として、メンテナンスが非常に楽といいますか、少なくてすむといいますか、とにかく手がかからない点が挙げられます。ガスが通るのはほとんど銃身内のみですのでボアスネークくらいでことたりますし、パッキンなど消耗の激しいパーツもなく、構造も大変シンプルで分解も容易です。Benelli社の特許技術として独占されてきた機構ですが、特許の期限が切れたため多くのメーカーが採用を開始しています。

3.銃身後退式(ロングリコイル)

現代ではなかなか見ませんが、元祖自動銃の機構です。Browning A-5や、Remington Model11などがあります。

(Youtubeから)

撃発後、銃身とボルトが後退し限界位置までいくとボルトのみ固定され、銃身が前方へ押し出されると同時に排莢、銃身が戻りきった瞬間にボルトの固定が外れボルトも戻り装填。1時間くらい眺めていられます。(笑)

他のシステムと違い、ボルトが戻りきり、銃身がもどって初めて排莢されるためタイミングが遅いです。稼働するパーツも多く、装填は今のガス式やイナーシャ式と比べると大変ゆっくりです。

それでは、自動銃を選ぶ際にどういった点を考慮するべきかについてと、オペレーションシステム別にそれぞれのランクをつけて述べていきます。

・ガスオート総評:★★★★(4点/5点)
速射性:★★★★★
衝撃の柔らかさ:★★★★★
威力・弾速:★★★
命中精度:★★★★
メンテナンスの容易さ:★★★

・イナーシャ総評:★★★★★(4.4点/5点)
速射性:★★★★
衝撃の柔らかさ:★★★
威力・弾速:★★★★★
命中精度:★★★★★
メンテナンスの容易さ:★★★★★

ロングリコイル総評:★★★(2.8点/5点)
速射性:★★
衝撃の柔らかさ:★★
威力・弾速:★★★
命中精度:★★★
メンテナンスの容易さ:★★★★

・速射性
自動散弾銃と言えば、トリガーを引くだけで3発連射できるという特徴がほか(上下二連やポンプアクション)とは違う点です。連射できる特性を考えると、いかに早く次弾装填が可能かという点は、非常に重要になってくる点だと考えます。
ガスオートは構造上、反動のみに頼らないため回転速度はもっとも早いと考えられます。イナーシャは1秒に4発くらいは撃てますが、ガスオートには劣るのではないかと思います。実証試験をしたいところですが、さすがに日本で実際に1秒に5発以上撃てるかどうか試すのははばかられます(汗)ロングリコイルは1秒に2発、早くても3発いけるかどうかでしょう。

・衝撃の柔らかさ
連射をする際、弾が装填されても衝撃で照準がぶれてしまい狙いが定まらないとなると、早く撃てるとしても当たらないという状況も考えられます。重要な点です。
ガスオートは銃身内にガスを逃がす穴がついておりガス量が減少するため、他のシステムよりも衝撃が軽くなるほか、リロードが比較的反動への依存度が低いため衝撃吸収装置を多くつけられるというメリットがあります。イナーシャ式はボルト部分の後退は完全に反動を利用する機構のため、若干の吸収が望めます。銃身後退式に関しましては、スプリングで多少の吸収はみられるものの、銃身ごとまるまる後方へ移動するため大変重い衝撃と、肩当を軸に銃自体の跳ね上がりが起きやすい構造です。
Remington Versa Maxのガスシステム↓

(Youtubeから)

・威力・弾速
いかに狙いを定めて撃てたとしても、距離がありすぎて弾の威力が足りなければ、獲れる獲物も獲れません。また、わずかながら、撃発時と弾が獲物に到達する時とで移動する獲物は位置に差がでます。こういった点から、良し悪しとしての判断材料にはなるかと存じます。
ガスオートは微量ながらガスを逃がす構造であるため、イナーシャ式と比較すると弾速は落ちます。その分衝撃が軽くなるのと、装填速度が速いという点で優れていますが、3インチマグナムを撃つ方には威力を損なわないイナーシャ式に軍配があがるのではと思います。今後実射テストで実証していければと思います。

・命中精度
基本的には散弾は散らばる範囲が広いため命中精度という点は気になるものではありませんが、スラッグやサボットなど、1丸弾となると話は別です。発射されるその1発が当たるかどうか、非常にかかわりのある点です。
私の中で「自動銃は命中精度が良くない」という常識を覆したシステムが、イナーシャ式です。BARライフルやそのほかのガスオート式銃はあまり当たらず、自動銃であればバックショットに頼る他ないと考えていました。ですがイナーシャ式のそれはスラッグ銃身でもボルト式サボットスラッグに劣らない命中精度を実現しています。

・メンテナンスの容易さ
分解は、メカをいじくりまわすようなロマンもある行為ですが、頻繁にすると大変面倒に感じますよね。狩猟ではさほど撃つ発数は少ないですが、だからこそ毎回手間がかかるのは大変です。安全にもかかわるため可能な限り常にベストコンディションで臨みたいところです。
ガス式は、単純に清掃する箇所が多いため、3種の機構の中ではもっともメンテナンスに手間がかかる機構です。Berettaの現行モデルは大変その点改善されていますが、前モデルのAL391 などは、メンテナンスが面倒だと感じた方も多くいらっしゃるのではないでしょうか。メンテナンスを怠ると、回転不良も割と起きます。
イナーシャ式は最も簡単です。レシーバ上部が外れるモデルもあります。
ロングリコイルも、さほど面倒ではありません。

結論、これらの面ではイナーシャ式がもっとも総評が良い結果となりましたが、メーカーによって性能や趣旨も様々です。次回更新では、メーカーとモデルの紹介を行っていきます。

最後までお読みくださり、ありがとうございました。